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「ぶえっくしょぃちくしょぃ…だぁぁー…」
焚き火をはさんで向こう側に座る幾沙は、相変わらず無表情だ。
上目遣いでこちらを見る幾沙の瞳には小さく揺れる焚き火と、焚き火の向こう側にタオルに包まれて震えている男が映っている。
濡れそぼった黒い髪と褐色の肌の貧相な男…それは、俺だ。
湯上り平和に寝ていた俺に大量の水が降って来たのだ。
幾沙が言うには、寝返りを打った俺に潰されそうになったから放電したのだが、頑強なパンダの俺にはあまり効き目がなかったので水をかけたとの事。
……いや、かけすぎだろ。
滝にうたれたかと思った。
当たり一帯水浸しなのが良い証拠だ。
「やべ……鼻水出てきた……寒い。」
冬の夜、大量の水をかぶって起こされてみろ…震えるなと言うほうが間違っている。
この焚き火は俺の体を完全に乾かすには火力が小さい。ないよりマシ、程度。
それもそのはず。
ここ一帯が幾沙の呼び出した水霊のセイで水浸しになり、うまく材料が見つからなかったのだ。
自分の上からどかない俺が悪いなどと憎たらしい事を言っていたが、バツの悪そうな何とも言えない視線から、少しは反省してるのかな、と思う。
「…使って」
何処から取り出したのか(たぶん魔法だろうが)、幾沙が簡易毛布を差し出す。
毛布を受け取るとひんやりと手が冷たい。
夜風にあたってるのはお互い様か。
「ここに座んなさい…アンタみたいなおチビでも湯たんぽ代わりにはなるだろ。」
幾沙は一瞬むっとした表情になったが、素直に従う。俺の隣にちょこんと座る。
腕を回して一緒に毛布に包まる。
一人よりかは、だいぶ暖かい。
「あれ、手首の…刺青?」
……目ざといな。
あぁ、俺を観察してるんだったっけ。
「…文字と模様…おまじない?ちがう…魔方陣みたいな…ずっと続いてるの?」
袖をまくって続きを見ようとする幾沙の手を払う。
「呪いだ。」
幾沙はビックリとして俺を見る。
そりゃそうだ。刺々しい行動をした当の本人だってビックリだ。
ふれられたくない事であるのは確かだけど……子供の興味本位の発言に目くじらを立てるとは、我ながら大人げない。
申し訳なくなって立ち上がる。
袖を引っ張り露出していた左腕をできるだけ隠す。
「……だいたいな、俺の秘密を知るには、いっちゃんは色気がなさ過ぎる!もうちょっと、こう流し目とかシナを作っ…」
落雷。
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赤いパンチング・グローブがトレードマーク。
「パンダといえば中国四千年」思想に辟易しており、フ★イフェイとかファンフ☆ンとか、人気パンダ風のあだ名に抵抗がある。
ちょい悪オヤジ系のダンディズムを追及中。
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