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偽島で、とあるパンダの歩いた道。
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――朝。
食後の一服の為に三本目の煙草に火をつけながら、ちらりと斜め後ろを見る。
相変わらずムッツリとした幾沙が黙って牛乳を飲んでいる。
いや、ムッツリしてるのは元からだが、雰囲気が微妙に刺々しい。
昨晩のこと、まだ怒ってんのか……ったく、やりづれぇなぁ。
煙草の煙でわっかを作りながら、ボリボリと頭を掻く。

その時、幾沙の陰に何かが居る事に気付いた。


「……あぁ?なんだソレ?」
俺は体をひねって、幾沙の背後に居るソレを摘み上げる。
「あれ、コイツ、歩行雑草…」
「あっ、ナエ!
幾沙は慌てて立ち上がり、ジタバタしながら奇声を発するソレに向かって手を伸ばす。
俺はソレが幾沙に触れないように腕を高く上げる。
「は?ナエ?これ、花ついてんぞ?
「ナエは名前!その子の名前なの!」
…アンタ、『ナエ』って…どういうネーミングセンス……。
「ってか、何で名前なんか…まさか、飼うつもりか?」
「…ついて…っ…きたからっ。」
ぴょんぴょん飛び跳ね、『ナエ』をつかもうとする幾沙。
「ついてきたって、あのなぁ…」
俺はちょいちょいと腕を上げて、ぎりぎりで阻止する。
『ナエ』は上下に揺られて断続的な奇声を発している。
ちょっと煩いな……やっぱ、食っちまうか、コイツ。
「もうっ!ナエをっ、放して…よっ!」
「何でもかんでも飼っていいと思ってんのか?」
幾沙は俺の余裕な態度が気に入らないらしい。
眉間にしわがよっている。
「大体、誰が面倒見んだ。」
「私がちゃんと見る…わよっ」
隙を見て取り返そうとジャンプするが、小娘にしてやられるほど、俺は耄碌していない。
「コイツ、犬猫じゃないんだぞ?まして草だぞ。どうやって面倒見るのか、わかってんのか?」
ナエにも影響を与えるかもしれないと思っているのか、お得意の放電や水霊召喚をしてこない。
幾沙は実力行使を諦めたのか、軽く溜息をついた。
「……迷惑はかけないから、飼っていいでしょ?」
真剣な眼差しに、ちょっと罪悪感を覚える。
本当は幾沙が歩行雑草を飼おうが食おうが、どうでも良かった。
俺の目下の心配は、幾沙の安全と健康だ。
万が一、歩行雑草が幾沙を襲ったところで、返り討ちにあうだけだろうし。
ただ、猫をネコジャラシでからかってるみたいな感じで面白かっただけだ。
「…そこまで言うならしょうががねぇな…」
ペットは子供の情操教育にはいいらしいしな…。
それに、これで機嫌も直るかもしれないし。
「おい、ナエ。オマエ悪さすんなよ?」
煙草の煙を吹きかけると、ナエは身をよじった。
「ちょっ…」
「そんなことしたら、胡麻和えにして食ってや…」

――がぶり。

「いってええええええええええええええええええ!!!」

ナエに噛まれた。
俺から解放されたナエは、幾沙の後ろに素早く隠れる。

じんわり涙目になりながら、いつか絶対コイツ食ってやる、と思った。

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パンダのこと
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非公開
自己紹介:
ヘビースモーカーなパンダ系獣人族。
赤いパンチング・グローブがトレードマーク。

「パンダといえば中国四千年」思想に辟易しており、フ★イフェイとかファンフ☆ンとか、人気パンダ風のあだ名に抵抗がある。
ちょい悪オヤジ系のダンディズムを追及中。

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