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集合場所と時間だけを決めて、各自解散した昼下がり。
俺は煙草とちょっとした食材を購入した後、郵便局へ向かった。
暇な時に少しづつ書き溜めた紙の束を購入した大きな封筒に入れて、窓口の女性に手渡す。
俺は係員に俺宛に届いているものはないか尋ねる。
「何か届くはずなのかい?」
今まで俺の頭の上で座を崩していたモモコはひらりとカウンターに舞い降りる。
「まぁな。俺がここにいるのは知ってるはずだからなぁ。」
「あぁ、妹さんからかい?」
「そうだよ。他に誰がいるんだ。」
「それもそうだね……旦那の甲斐性じゃあねェ。」
……失礼な奴だ。
待ってる間、いつものクセで煙草に火をつけかけ、局内は禁煙だよと、モモコから抓られる。
「で、妹さんは元気なのかい?」
「おかげさんで。」
俺は抓られた腕をさすりながら答える。
係員が、封書を束ねたものを持ってきた。
「……兄に負けじと筆まめだネェ。」
モモコが微笑んだ。
「妹さん、何やってんだい、今は。」
郵便局を出て煙草を銜えると、歩き煙草は危ないよと諭される。
意外とモモコはうるさい…恋愛のモラルは低いくせに…。
「何って……実家にいるよ。」
「確か、病気がちだったじゃァないか。」
「昔の話だろ。」
「そうだけど、大変だったんじゃ……」
「今はヒトよりちょっと風邪引きやすいくらいのもんだ。成長すると強くなるな。」
こう言うの、何て言うんだっけな。
『痛い腹さぐられる』だっけ?
「まぁ、とにかく、気にかけてくれてありがとな。」
この話題を打ち切りたいという意図は伝わったのだろうか。モモコはそれ以上聞いてこなかった。
市場の外れのちょっと開いたスペースまで出ると煙草に火をつける。
違う種類の煙草の匂いに、頭上のモモコも煙管に火をつけたのだとわかる。
「あ、嬢ちゃんだ……」
モモコの声に辺りを見回せば、人込みの中へと歩いていく少女と歩行雑草の姿が見えた。
声をかけなかった事を、俺はあとで悔いる事になる。
それでも、この時は、束の間の静粛な時間を大事にしたかった。
色んな事を静かに青空の下で考えたかった。
手の中にある手紙の束が俺をそういう気持ちにさせるのだ。
俺に娘を預ける親の気持ちとか。
俺に孫を引き合わせた爺の気持ちとか。
空白の時間を詮索しない友人の気持ちとか。
――俺は、そんな人々の気持ちに応えられるのだろうか、と。
そう。
俺がもし、感傷に浸ったりしていなければ、きっと声をかけたのだろう。
一時間も待たされるのだとわかっていれば。
「男を5分以上待たすのはナイスバディになってからにしろ」とか言って、足を思いっきり踏まれるとわかっていれば。
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赤いパンチング・グローブがトレードマーク。
「パンダといえば中国四千年」思想に辟易しており、フ★イフェイとかファンフ☆ンとか、人気パンダ風のあだ名に抵抗がある。
ちょい悪オヤジ系のダンディズムを追及中。
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